スタッフ紹介

佐藤 廣 Hiroshi Sato

私は、よこすかキャリア教育推進事業を担当しております横須賀商工会議所情報企画課主任の佐藤廣と申します。
私事ですが、平成5年に入社後、25年度で20年を迎えた中年職員で、この事業も立ち上げ当初から関わらせていただいております。

ここでいきなりアイスブレイク。
みなさん。“よこすか”ってご存知ですか?
横須賀の有名人といったら。。。
昭和の人には、山口百恵さん、渡辺真知子さん。
平成の人には、小泉進次郎さん、上地雄輔さんなどなどですね。
イチ押しの食べ物といったら。。。
よこすか海軍カレー、ヨコスカネイビーバーガー
その他、記念艦三笠、ぺリ―来航、海上自衛隊、米海軍横須賀基地などなどがあります。

それでは、本題に入ります。

なぜ、商工会議所がキャリア教育なのか?

フリーターやニートなどの若年者の無就業問題、横須賀市内に目を向けると少子化や人口減少による労働生産力の低下が危惧される中で、若年者の他地域への流出は、地域エネルギーの減退に拍車をかけることになります。そこで長期的な視野に立ち、横須賀を担う人材は、地域で育て・地域で活躍できる土壌を築く必要性を感じ、「よこすかで働く大人は、みんな子ども達の先生」をスローガンとして、子ども達に夢を与える社会の実現に向け、学校現場だけで担ってきた子ども達の教育に地域企業が関わり、職業観・勤労観の醸成と地域への愛着心の醸成をめざし、横須賀市、市教育委員会と当所が連携し、平成20年度から、よこすかキャリア教育推進事業「中学生“自分再発見”プロジェクト」を展開しています。

当所がキャリア教育に関わることになったきっかけは、職場体験の推進が始まった頃でした。地域の企業や商店に職場体験を協力してもらうため、校長先生はじめ現場の先生方が、地域に出向き企業開拓をするものの、時間の面でも人手の面でも限りがあり、なかなか広がっていかないという声をよく聞きました。そんな折、当所には学校からの企業紹介依頼が多くあり、企業を紹介していたわけですが、受け入れ企業側が職場体験の目的や意味を理解しないまま、子ども達を送り込んでも、企業はどう受け入れてよいのかわからない。これでは、大人の都合だけで子ども達を犠牲にすることになります。将来を見据え地域を支える人を育てるためには、教育現場だけで完結させずに企業にも学校にもメリットのある形をつくることが「キャリア教育」であると思ったことからでした。
また、当時の会頭が、「商工会議所というところは地域の企業を支援する団体。その企業を支えているのは人であり、人を育てることも商工会議所の役目でもある。」と言って、この事業を強力に推進することに道筋をたてていただいたことも、今に繋がっています。

マイ・タウン・ティーチャーを活用した支援プログラム

地域企業から派遣された職業人講師=マイ・タウン・ティーチャー(MTT)を活用したプログラムについて説明します。
現在、市内の中学校では、職場体験学習を実施しています。この学習は、子ども達にとって、職業観・勤労観を醸成するとても有意義な体験学習だと思われます。しかしながら、この学習だけでは、単なる一過性のイベントになってしまいがちであり、もっと効果的なプログラムにするには?というところから、MTTを活用した職場体験の事前事後の教育プログラムを提供しています。

主だったプログラムは、次のとおりです。

ポスターセッション~私の仕事紹介します

MTTによる職業紹介プログラムであり、職場体験前に実施する学校が多いのが特徴です。体育館等に机を置き、仕事道具や説明のためのパネルを持参し、企業展示ブースを作ります。子ども達は、興味のあるお仕事ブースに行き、仕事の説明を聞いたり、ちょっとした仕事体験をしたりするものです。※写真は、〝看護〟体験の様子


ビジネスマナー研修

職場体験に行く直前に実施します。企業研修等を請け負う、キャリアカウンセラーの資格をもつMTTから講義を受けます。子ども達を新入社員に見立てて、実際に企業で行なう研修をベースに、挨拶の大切さ、身だしなみとおしゃれの違い、電話応対、名刺交換といった本格的なビジネスマナー講習を実施します。仕事に対する意識を持ってもらうことをねらいとして実施しています。


グループディスカッション~出会いが心を揺さぶる

主に、職場体験後に実施する学校が多いのが特徴です。
5~6人の生徒に対し一人のMTTを配します。職場体験で生じた疑問や悩みを、MTTやクラスメイトと共有すると共に、MTTが仕事のやりがいを語ることによって、学校で勉強したことが仕事でどのように役立っているかなどを話し合います。これらを通して、地域で働く大人が真剣に仕事に取り組んでいることを知り、地域を見直すことにもつながっています。


事務局では、以上のようなプログラムを用意しているわけですが、どのプログラムを活用するかは、各中学校に任せています。あくまでも各中学校が主体となるスタイルをとっています。担当教師と本事務局に常駐しているキャリア教育コーディネーター・事務局が一緒になって、学校の現状や生徒の状況を話しあい、実施できるプログラムのレベルなどを考慮し年間計画を作成していきます。ここで、一番大事にしていることは、『担当教員が何をしたいのか』をはっきりさせることです。そうすることによって、担当教員にも主体性が生まれ、やらされているのではなく、教員自身が楽しんでいるという雰囲気が出て、それが生徒に伝わり、ひいては学校が良くなるというサイクルが生まれています。

なぜ、企業がキャリア教育に関わるのか?

続いて本事業に参加していただいたMTTの声を紹介させていただきます。

・中学生と話をすることで自分が何のために働いているのか考えさせられることが多く貴重な体験をしました。
・子ども達に働くことの意義を話すことで、自分の中でも整理ができた。もっとたくさんの体験を話せるように、自分自身もキャリアを積んでいこうと思いました。
・中学生の教育に直接携わることができたことは、達成感・満足感と呼べる感覚がありました。社会人も〝自分を見つめ直そう〟というテーマで参加できる時間になりました。
・生徒たちからの質問で、「今の職業でよかったですか?」と聞かれ、「改めてよかったと思います」と胸をはって話せたことが自分でも嬉しく感じました。

企業にとって、このプログラムにMTTとして参加することが、「子ども達を育てる」というだけでなく「社員が育つ」という声を多くもらっています。生徒たちを前にして、職業観・勤労観を話すことは、改めて自身の仕事の意義を考えたり、仕事に向かう姿勢を見直す機会になっているのです。
地域企業の方々は、自分の街をよくしたいという気持ちを持っています。今、職業人として働いている私たちの世代が頑張るのはもちろんのこと、その後の世代をどう育てるのかということも、地域に生かされている企業の役割なのではないかと感じていますし、将来、この事業で関わった生徒が、自分の会社に入ってくれれば嬉しいですし、社会人として横須賀を盛り立ててくれるりっぱな大人になってくれればと思って参加している企業の方も多いのではないでしょうか。

地域全体で教育を行なうという視点を持ってもらいたい

最後になりますが、このキャリア教育というのは、学校だけで完結することは難しい教育だと思います。先生方には、もっと地域に目を向けて人的ネットワークを持ってもらいたいと思います。
先生方は「教育を行なうプロ」ですが、全てを抱え込む必要はないのではないでしょうか。時には自分よりも知識や技術がある「職業のプロ」に頼ってもいいのではないでしょうか。
そのためには、地域を知り、いざというときに相談できる関係作りを心がけること。地域との付き合いを大事にしてほしいと思います。

最後に、この事業を経験した子ども達が、将来横須賀のみならず、日本を支えてくれるような大人になってくれること。そして、MTTとしてこの事業に参加してくれることを夢見て、事業を推進していきたいと思っております。

いい人材はいい地域から育つ
いい地域はいい学校をつくる
いい学校はいい人材を育てる
いい人材はいい事業所を支える
いい事業所はいい地域をつくる

望月 健二 Kenji Mochizuki

キャリア教育コーディネーターの望月と申します。聞きなれない仕事の名前だと思いますが、これについては最後に説明します。

「キャリア教育」という言葉、よく聞くようになりましたね。
「キャリア教育」は幼稚園の頃から始まっています。将来、社会の一員になる練習として、例えば、「お店屋さんごっこ」を通して挨拶をする、決まりを守る、助け合う、仕事を体験する、などを学んでいました。
小学生の時に、「生活科」の授業で「学校探検」や「まち探検」で「学校で働く人を調べてみよう、話を聞いてみよう」や「近所のお店屋さんを調べてみよう、働いている人に話を聞いてみよう」、また、職場見学や職業体験としてお店を手伝うなど、皆さんも体験したことはありませんか。これらの経験・体験をキャリアと言い、その教育を「キャリア教育」と言います。


キャリア教育を中学生向けに言うと、「夢を持つ力」、「夢を追う力」、「夢を実現する力」これらの力を付けようという教育のこと。
「夢」とは一人ひとりの人生の事です。

当たり前のことですが、皆さん一人ひとりの人生は、同じものは一つもありません。
それはその人の志向や能力、特性、性格や環境など、多くの要素がすべて異なるからです。
ただ勉強するのでは楽しくない。どうせやるなら夢や希望や目標を持って勉強したほうが楽しいということを、みんなに気づいてもらおうという教育のことなのです。
学校は、一人ひとりの人生=「夢」を実現するために必要な学びを行う場所なのです。
授業だけではなく、クラブ活動や生徒会活動もキャリア教育の一環になります。

では、皆さんに質問します。あなたは「夢」を持っていますか?あなたの「夢」はなんですか?
早ければ間もなく、遅くとも5年後、10年後には社会人です。その時にどのような職業について毎日の生活をしているのかを想像しながら「総合学習」に取り組んでみたらいかがでしょうか。
「急にそんなこと言われても困る。」と思っていませんか。今すぐに結論を出す必要はありません。
これから少しずつ学んでいきますので安心してください。(文科省資料他引用)

2003年12月に、13歳のハローワーク(村上 龍著)という本が発刊されました。図書館などで見たことがあると思います。 (2010年 新13歳のハローワーク発刊)
いろいろな視点から職業(仕事)が紹介されています。では、なぜ13歳なのでしょう?
13歳は人間的に大人への入り口です。ちょうど中学1年生から2年生の年齢です。
今からでも遅くも早くもありません。職場体験を通して課題の一つである「働くことの意味・意義」をしっかり学んでください。早くとも5年後、10年も経たずに社会人になります。
意外に短い中学校生活、反面、中味が濃い中学校生活、中学校までの学力が大人としての基礎学力になります。大切に過ごしてくださいね。
目標に向かって努力する。このことが皆さんの成長につながるのです。

私の夢

私の小学校の頃の夢は、大空を飛ぶ飛行機のパイロットでした。
中学校へ通い始めたとき、友達が日航のパイロット募集の広告記事を持ってきました。
応募条件を見てショックを受けました。詳細は忘れてしまいましたが、概略は大学卒業または大学卒業見込みの者、身長170㎝以上、体重65㎏以下、裸眼視力1.2以上、耳鼻咽喉に異常なし、虫歯0、簡単な日常英会話、心身ともに健康であること。
どう見ても条件が一つだけクリアできそうもない。それは身長が問題。親を見てどうやっても伸びそうもない気がしました。
牛乳を飲んだり、バレー部に入って届かないネットを見てジャンプしたり、小さな努力をしたが3年生になる前に夢がしぼんでしまいました。

私が高校を選んだ理由は、親を早く経済的に楽にさせるため、工業高校に進学しました。当然卒業したら就職と考えていました。具体的な目標があったわけでもありません。
卒業を迎える年、就職のための求人票を見ていたら、懐かしい名前がありました。かつて憧れていた職業名と同じ名前の平塚にあるパイロットプレシジョンに就職しました。
入社後も目的のないまま勉強を続けていました。1年が過ぎる頃、胸の中に大きく膨らむもやもやがありました。
「このままこの会社で一生を過ごすのだろうか。」「本当は何をやりたかったのだろう。」と葛藤していました。
当時は終身雇用制が当たり前だった時代、会社を辞めることにかなりの抵抗がありました。

心のどこかに小学校時代の先生への「あこがれ」があったのです。
小学校の時、差別問題が発端で、クラスから無視や陰湿ないじめを受けました。
朝登校すると上履きの中にミミズが入っていたり、椅子には画鋲が置いてあったり、ついに我慢できず不登校に。
クラス担任は知らん顔、話を聞いてくれたのは器械体操が得意だった若い先生。いつか自分も人の心が分かる先生になりたいと憧れていたことを思い出しました。
「いつまで続けられるの。勉強は大切だから授業に出ようよ。」寂しい心をいつも温めてくれていました。
そんな時でも担任は「いい加減にしなさい。早く学校に来なさい。」君たちはどんな大人になりたいですか?
この出来事は、大人になった今でも深い傷となって心に残っています。

そこからは「あこがれ」を目標に変え、20歳になって働きながら夜間の大学に通い「大学卒業の資格」を取りました。
卒業の年に受けた教員採用試験はものの見事に落ちました。悔しさをばねにして、遊ぶ時間も惜しんで1年間頑張り次の年に見事合格し、教員に採用されました。
教員になってからは、この経験を活かし、高校で進路指導担当として生徒の進路やキャリアについて多くの生徒に向き合ってきました。
目標が決まったら、それに向かって努力する。目標を持つことが大事なのです。
「夢を持つ」、「夢を追う」、「夢を実現する」、一つの「夢」が実現すれば、満足することなく次の「夢」に向かっていきます。
「やればできる」「やったらできる」努力は自分を裏切らない

職場体験

さて、中学2年生の「総合学習」キャリア教育の一環で職場体験を実施します。この職場体験を通して仕事について学びます。
まず、職場体験では「仕事って何?」、「なぜ人は働くの?」、など考えてみましょう。
それでは何人かに質問してみましょうか?「働くのは何のためですか?」

・夢を実現するため
・自分を成長させるため
・生活を安定させるため
・社会の一員として貢献するため
・新たな出会いを求めるため
・お金を稼ぐため
・地元の役に立ちたいため
・きれいでいたいため
・高級車に乗りたいため
・家を建てたいため
・親を楽にさせたいため
・海外旅行がしたいため

答えは人によってまちまちですね。
傍(周囲)を楽にするから“傍楽(はたらく)”、とも言われています。

夢の内容によっては、夢や憧れを職業とするのか、あるいは夢を実現させるために働くのか、趣味をそのまま仕事にするのか(イラストや漫画など)、どの道を通り一生を過ごすのかは、君たち自分自身が考えること。難しいこともあるかもしれませんが、今から考えてみましょう。
職場体験は、これからの将来に向けた訓練です。仕事とは?働くとは?などを自分自身で考えるスタートになります。中学生は働くことを学ぶ、働くことから学ぶことが課題です。近い将来、社会人になる君たちの大人へのスタートです。

ところで、この「職場体験」が次の進路につながっていることを意識していますか。
夢の実現性を高めるために、あるいは学習をさらに深めるために、上級学校に進学する生徒は多いと思います。
自分の目指す職業に就くために中学生ならば高等学校に、高校生ならば大学や専門学校に進学します。
夢や憧れを目標に変えるために人は努力を重ねます。
職種によってはいろいろな「資格」が必要になってきます。高校卒業で得られる資格、大学や専門学校で得られる資格、経験の積み重ねで得られる資格、「高校卒業」も一つの資格です。
自分がなりたい、やってみたい職業にどんな資格が必要か調べてみてください。
中学校卒業で、社会に出て働こうと考えている生徒もいるかと思いますが、現実はかなり厳しいです。「高校卒業」という資格をまず取ってみましょう。
「夢を持とうよ!」「夢を追おうよ!」「夢を実現させようよ!」
「夢は語ったほうが良い。言わなきゃ何も始まらない。」と“キングかず”こと三浦知良は言っています。「夢は追い続けると実現する。」マラソンの金メダリスト髙橋尚子。
「夢は持ち続け、追っていれば必ず実現する。」ヒマラヤ(チョモランマ)に80歳で3度目の登頂を果たした冒険家・三浦雄一郎は語っています。

キャリア教育コーディネーターと言う職業は、将来を背負う君たちに、“今の大切さを伝えたい”という職業なのです。

工藤 恵子 Keiko Kudo

よこすかキャリア教育推進事業になくてはならない「マイ・タウン・ティーチャー(MTT)=よこすかで働く大人はみんな子ども達の先生」の紹介をしている、“働き人”を作成しています。
MTTのみなさまからは、MTT体験を中心にその方の人生観や職業観などを伺っています。仕事に真剣に向かい合っているのはもちろんのこと、“未来の社会人”の中学生にも真摯に接してくださり、子ども達と充実した時間を共有していただいている様子が伝わってきます。
取材をさせていただいたみなさまは、私がまねできないような努力をしてきた方たちばかりです。

感想文やご意見をいただく中でキャリア教育にも「本気で向かい合ってくださっている姿」が見えてきました。
話してみて解るMTTの魅力を紹介できるのが、“よこすか働き人”の特徴です。話しづらいことも、人生の一部として率直にお話していただくこともあり、とても感謝しています。
私にとっては、毎回どんなお話が聞けるのか楽しみです。
大切な体験談から“その方らしさ”を、よこすか働き人を手にした方々に伝えたいと思います。
一人ひとり考えや同じ人生はないことも、読み物を作る上では重要な部分になります。また、「なぜこの取り組みに参加したのか」という事業者の“キャリア教育”への理解と思いを知ることができ、コマーシャル、インフォメーション、コミュニケーションとして、みなさまにお届けしたいと思っています。

MTTの方は年代も様々、業種も様々です。
生き方も十人十色、経歴や技術やスキルを身につけた社会人が、改めて自分の過去を客観視しふり返ってみると、思いもよらなかった視点から物事を見られる、今後の仕事への意欲にもつながるとのご意見も多くいただきます。
子どもに伝えるというアクションが、社会人の方にとっての「非日常体験」が、MTT経験の醍醐味になっているようです。
どうしたら伝わるか考えることや、相手の立場になった言い回しなど工夫を凝らし、接してくれています。
子ども達のリアクションや、質問への返しの意外性なども、このプログラムの面白さだと思っています。
大人の想いに触れる“仕事”の話は、子ども達には、一番伝わるようです。

キャリアなんて考えもしなかった時代

 私が育った時代に、“キャリア教育”という言葉を聞いた事はありませんでした。
“キャリア”と聞くと個人的には堅苦しいイメージを抱き、“自分の中にはないもの”と感じていました。
職業の専門知識だけでなく、人として生きていくために必要な努力の積み重ねによって得た知識や所作、マナーや言葉づかいが経験と共に“キャリア”という言葉に含まれていると思えば、全ての人にあてはまることで納得ができます。

目からウロコの自分再発見

私は数年前、PTA広報委員として「中学生“自分再発見”プロジェクト」を取材する側でした。
2年生を対象に学校として取り組むことになったと聞き、「これは学校の取り組みを保護者に紹介できる絶好のチャンス」と思い、取材をさせていただきました。
初めて“プログラム”を見学した私は、“目からウロコ”でした。
”ビジネスマナー“では電話対応を主に、社会人としてのマナーを知ってもらうというもので、講師の先生が、「昔は家の電話しかなかったので、誰が出るのかドキドキしながら、好きな子や友達の家に電話をしたりしたものでした。」と話されたとき、「そうだったなー。」と懐かしくなりました。
昔は暮らしの中で、社会性を養える場面が至る所にころがっていて、わからないながらも、”慣れて“社会に出て行っていたことに気がつきました。
家族の共有だった家の電話には、マナーがありました。長電話をしている間に、「別の電話がかかってきたら、話し中で困ることや、相手のお宅にも迷惑になる」と叱られたこと、それがみんなの常識でした。
夜の時間帯は、よほど緊急な用事ではない限り失礼になるので控え、やむをえず電話をしなければならない時は、「夜分に申し訳ありません。」と前置きをすることは大事なマナーです。

現在は相手の時間を邪魔することが少ないメールやSNSの利用が圧倒的になりました。
もちろんそこにもマナーは必要だと思いますが、共有から固有の流れになって、携帯電話で直接友達とやりとりができる子ども達にとって、私達が経験した「緊張感」を大人になってから経験することになる。
出来なくなった環境になったのならば、あえて“慣れさせる”環境を作る、「経験の場」が必要になったのだと思います。

コミュニケーションを考えた

グループディスカッションの「働くとは?」というテーマは、そんなことを考えずに育った世代から見ると、ギャップを感じるところはあるのですが、逆に「何故、考えなければならないか?」というところに行き着くのだと思いました。
まだ働いたことがない子ども達の疑問にMTTの方たちが真剣に答えてくれている姿、その話を感心しながら聞いている子ども達との間に、何か懐かしい子ども時代のコミュニケーションと重なりました。

私の住んでいた地域は、「働く人」が身近に見える環境でした。
町は個人商店で、買い物はコミュニケーションそのものでした。
現代と違い、お店の人と必ず会話をしなければなりません。遊びでしていたお買い物やさんごっこから、現実にお金を持って言葉を交わし、買い物をする。
生活をしているそのものに、生きる力を養わされていました。
今はというと、スーパーに買い物に行っても、黙って商品を取り、レジへ…誰かと言葉を交わすことはほとんどありません。
探し物の売り場を尋ねるくらいです。

大人になってからなら、それでもいいかもしれませんが、子どもの頃の縦割りコミュニティにこそ、社会性を養うことができた図式が整っていた大切な場なのだと、今になって思います。
世間話をする大人のそばで話を聞いているだけでも、子どもの私には感じるものがありました。
いわゆる“世間話”を小耳に挟んで、「大人の社会」を頭の中だけでも理解したつもりになって育ちました。
現実社会の厳しさは、社会に出てから知ることになったのですが、すぐ近くで「働く姿」が見られたのも、社会に加わっていた自分が「働くこと」が遠いことではない環境であったのはありがたいことでした。

このプログラムでは社会人とディスカッションすることで、子ども達に“発見”の環境を与えることができるのではないかと思っています。
子どもの発想を大人が受け取り、さらに社会人にも“発見”を与えている。
おそらく、今までもそんなことが繰り返された「日常」だったのだと思います。

“コミュニケーションが苦手な人が増えている”と言われますが、私は自分の育った環境と比較するとコミュニケーションが自然にはとりにくい、また、とらなくてもすむ社会になったという方が納得できます。
このまま社会に出して、コミュニケーションが最重要となる仕事現場で窮屈な思いをし、離職や自信を失ってしまう原因になってしまうかもしれない不安を親として感じます。
子どもは親が思う以上に自信がないと感じているのかも知れません。
MTTとの話の中で、「子ども達がいろいろなことを感じてくれている」様子を目の当たりにし、素朴に思うことや、感じることを親や先生以外の大人に聞いたりする場面も少なくなっているのだと少し寂しい思いになりました。
「親として、してあげられることがもっとあるのではないか。」とも思いました。
でも、子どもが育つ環境は他人によって磨かれたり、気付かせてもらったりするので、社会人に触れ合うことはありがたいことだと思います。

自分だけの経験を大切に思う

プロジェクトにかかわるようになって、私も自分の経験をふり返るようになりました。何故、あの職業に興味を持ったのか?
やりたかった理由や、過去の自分、その時の考えや思いについて素直に向き合ってみました。

いくつか経験した仕事は、特別な職業ではなかったのですが、その時は目の前の“やるべきことに徹する”日々、それが“仕事”という考えでした。
仕事の中身や内容より、心に強く刻まれているのは、“仕事に向き合う人”の姿です。
人の思いが込められた仕事を見た時、“人”を忘れることはできなくなります。

経験の一つひとつが身になっていて、無駄だと思うことはひとつもありませんでした。
今になってやっと仕事ということを少し理解できるようになった気がします。

過去をふり返ると、仕事は内容よりも、「どんな人と仕事をしたか。」「どんなお客さまに出逢ったか」「どんな思いだったか」「人に喜んでもらえたか」など、必ず“人”につながっていました。
私にとっての“仕事”は全て“人”との出逢いや“思い”そのものでした。
「今日この人に会って、話が聞けて良かった。」「今日の失敗を叱られて良かった。」「ありがとうと言ってもらえた」、昨日の自分より今日の自分が、少し成長できていたらうれしいと思える。変化を得られることがやりがいでした。
今でも、様々な年代の人と関わり、知らない事を学んだり、存在を確認できたり、生きる力を身に付けさせてもらっています。

目には見えない“人の思い”に携わらせていただいていますが、人という仕事が目に見えます。
これからも、感動を伝え、ワクワクする“未来を探す仕事がしたい”と思っています。