よこすかキャリア教育推進事業
ホーム  >  よこすか働き人  >  菱沼 和久さん
来た依頼は断りません

 私は、土地家屋調査士(以下、調査士)になって今年で30年を迎えました。他にも測量士、宅地取引責任者の資格を取得しているため、土地と建物に関する様々な現場に対応できます。
 この仕事は、精神的にも肉体的にもタフでないと務まりません。技術屋ですが、人とコミュニケーションをとることが非常に多い仕事です。土地の登記の際の測量は、隣地の立会いが必ず必要なので、中立である私たちがお願いに上がることも少なくありません。
 いろんな方がいるので、世間ばなしにお付き合いすることもあって、様々な人間模様を垣間見る場面もあります。
 時には、命綱をつけて登るような険しい場所や樹木の種類や数を地図に起こすという国立公園の測量もありました。木の種類なんてわからないので、植物図鑑を片手に、一本一本確認する地道な作業をしたこともあります。
 依頼はほとんどが口コミで、景気に関係なく仕事があるのも利点です。基本的に、来た仕事は断らないのが私のポリシーです。三浦半島を中心に、神奈川県全域が営業エリアです。

仕事は天職

 調査士は、目指していた仕事ではありませんでした。父が漁師で、時々手伝いをしていて、何となく「跡を継ぐのかな」くらいのボヤッとした考えでした。
 転機は、夜間大学に通っていた学生時代、食事も摂らず配達のアルバイトをして無理がたたり入院を余儀なくされました。病み上がりに「時間があるなら、手伝いに来れば」と、先輩の誘いを受けたのが、この道に入るきっかけでした。
 始めは、週1日程度でしたが、だんだん仕事が面白くなり、資格が取りたくて仕方がないほど、のめり込んでいきました。
 じっとしていられない性格だと自覚していたので、自分の肌に合っている仕事だと思います。辛いことはあっても、辞めたいと思ったことは一度もありません。天職に出会えたと思っています。

もっと知らない職業を

 よこすかキャリア教育コーディネーターになった高校時代の恩師から、中学生に仕事を紹介してみないかと誘いを受け、MTTを引き受けました。業界の知名度アップにもなり、職業観を養う中学生の役に立つ、双方にとって良い試みだと思います。
 調査士は、中学生が憧れる職業ではないと思うので、先ずは職業を知ってもらうのが目的です。最近は、測量機が向上したので、ボタン一つで測れてしまう性能を確かめてもらいます。
 教室に置いた境界間の距離を測って面積から土地の価格を割り出し、離れた場所からでも生徒の身長を瞬時に当てることが出来るなど、見てわかる体験をしてもらいます。
 私が中学生の頃は、何になりたいかなんて考えたことも無かったので、今の中学生がうらやましいです。時代は変わったと実感しています。
 横須賀には、頑張っている魅力的な大人がいるので、知らない職業や熱意を持った人を、もっともっと紹介してほしいと思います。

横須賀は捨てたもんじゃない

 どんな仕事でも大変な部分や良い面があり、土地に関しても100%満足などありえません。仕事で様々な地域を見ていますが、調査士の観点からすると、横須賀は捨てたもんじゃないと思います。
 海が近い西部地区が人気で、不便といっても知れたものです。その代わり不動の景観があり、都会から移り住む人も増えていると聞きます。
 また、古くからある建物と新しいモノが混在しているのも珍しい地域と言われています。表裏一体、価値をどこに感じるかによって、マイナスはプラスに変わると思います。新たな価値観を作っていくのも、地域のなせる業だと思っています。
 仲間と「横須賀に住み、仕事をしているんだから、この場所で頑張り続けていくしかない」と、よく話しています。私にできるのは、確かな仕事を実直にすることではないかと思います。
 子ども達に伝えたいのは、何をしたいのかわからないとき、「自分の中の疑問に思うこと」が、仕事探しのきっかけになるかもしれないということです。
 探求心を原動力に行動を起こすのは、中学生にもできることです。そして、仕事の良い面を見出す力を養ってほしい。やっぱり、好きなことじゃないと続かないと思いますから。

ページの上に戻る